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Intel PRO/100 Sレビュー


2003.04.23 (最終更新:2003.09.23)
  関連項目:BOOT ROMの無効化

  関連項目:PROSetII 6.4の設定について


LANカード全景
メーカー Intel
製品名 INTEL PRO/100 S
購入価格 \3980(2002年7月:バルク価格)
採用チップ Intel:82550C
WOL端子
WOLケーブル付属
ACPI対応
LowProfile対応
(AINEX製PA-010LANで対応)
対応OS Windows95〜XPまで全て


少し前までは高級NICでしたが、最近ではバルク品が大量に流出しているため、一気に安くなりました。 特に土日の秋葉原では\4000を切る値段で販売されています。

AINEXから発売されている“PA-010LAN”に交換することで、 Low Profile化も可能です。

この製品の型番の最後についている「S」ですが、これは「Security」のSを示しています。IPセキュリティをNIC上のチップが行うため、 この機能をオンにした場合はCPU負荷が非搭載のNICに比べて圧倒的に減少します。

Pro/100 Sには前期と後期の2バージョンがあり、前期のものはi82559チップ+IPSecチップで、後期のものはi82550となります。 つまり、i82550ではIPSec機能がコントローラーチップに内蔵されています(写真は後期バージョン)。

Intelチップが搭載されたLANカードのほとんどは、Intelから提供されている 『PROSetII』 というソフトで詳細な設定を行うことができます。
2003/04/09現在の最新バージョンは8.0で、ソフト自体は微妙に日本語化されています(ダウンロードページは英語)。
8.0はまだ出始めのドライバですので、安定志向の方はこのドライバの評価が出るまで「PROSetII6.4」を使用することをお勧めします (PROSetII6.4もダウンロードページは英語ですが、本体はMulti Languageなので日本語にも対応しています。ただし、Win98,Meでは英語版のみの可能性があります)。

Pro/100 Sの詳細なデータシートはこちら

PROSetII 8.0からは他社のNICを認識するようになったようです。

消費電力は1.25W(+5VDC)。



ネットワークコントローラーチップ
・コントローラーチップ

Intel製”i82550
82559と同様のBGAパッケージ・ワンチップ型で、送信・受信用にそれぞれ9 KbyteずつのFIFO Bufferを内蔵しています(Pro/100+ は3kbyteずつ)。
3com製チップと同様に、データ通信時におけるCPUへの負荷の低さが売りで、これが低価格LANコントローラーと決定的に違う点です。 実際、100Mbpsを謳う低価格NICでは、特にUpload面のCPU負荷でIntel製チップには到底及びません。

IPSec機能も内蔵していますが、個人利用の範囲ではあまり価値がないと思われます。

・ブラケット部

ステータス確認用のLEDは2個。
「ACT/LINK」,「100TX」

・Boot ROM

Intel系以外のチップセットで自作をしたことのある方なら大抵はお目にかかったことがあるのではないかというくらい有名なチップ、 "SST(Silicon Storage Technology, Inc.)製 "39VF512"。
64K×8 = 512KbitのFlash ROMで、2.7V,70nsものです。

・WOL端子

あまり見ないソケットですが、バルクでもWOLケーブルは添付されているので問題ないでしょう。
PCI2.2に対応していればLOMによるWakeUPが可能です。

・トランスフォーマー

Pulse製”H1138”(PDF形式)


IPSec機能と通信速度について
このPro/100 Sでは、デフォルト設定で IPSec(Internet Protocol Security)がONになっています。 Intelからドライバと共に提供されているツール「PROSetII (バージョン8.0)」の設定画面で
IPセキュリティのオフロード)を(オフ) に設定すると、かなりの速度の向上が期待できます。

IPSecの設定


エクスプロラーでのローカル⇔リモート間ファイル転送測定方法はこちら


ローカル-リモート間ファイル転送速度
測定環境
ローカルPCメインPC
リモートPCセカンドPC
接続形態HUB経由
プロトコルNETBEUI
ドライバPROSet 6.4
※300MBのダミーファイルを転送。3回計測した平均値をグラフに示した。
確認のためにIPSecをONにした状態とOFFにした状態での転送速度を比較したところ、明らかな差異が見られました。
ハードウェア(i82550)によるIPSecはソフトウェアのものよりCPU負荷が圧倒的に低いですが、速度の面ではIPSecは不利にはたらきます。
パフォーマンスを追及するならIPSecはOFFにするべきです。


さらにアダプティブ テクノロジを「オフ」に、

アダプティブ テクノロジの設定

アダプティブ パフォーマンス チューニングを「アダプタの帯域側」にすることで、より良好なパフォーマンスを得ることができました。

アダプティブ パフォーマンス チューニングの設定


TCP/IPとNETBEUIによるファイル共有の違いについて
今までネットワークコンピューター間の接続プロトコルには、比較的重くないプロトコルということでNETBEUIを使っていました。
しかしながらTCP/IP接続の方が速度が出るという話をよく聞きますので、この2種のプロトコルでファイル共有を行い、転送を行ったときの速度とCPU負荷を測定しました。


エクスプロラーでのローカル⇔リモート間ファイル転送測定方法はこちら



測定環境
ローカルPCMain PC (Pro/100 S)
リモートPC2nd PC (Pro/100 S)
接続形態Hub経由
プロトコルTCP/IP / NETBEUI
接続速度100Mbps / Full Duplex
転送ファイル容量300MB
※ダミーファイルをエクスプローラーにて転送し、5回の平均転送時間を元に転送速度を求めた。測定にはストップウォッチを使用した。
・CPU負荷
Remote → Local (Download) Local → Remote (Upload)
TCP/IP Download時CPU負荷

Upload時CPU負荷

NETBEUI Download時CPU負荷

Upload時CPU負荷



通信速度を見ると、特にUpload(ローカル→リモートへの転送)でTCP/IP接続のほうが圧倒的に速いという結果になりました。
CPU負荷の面では、高速なぶんNETBEUIよりもTCP/IP接続の方が高負荷になっているようです。



PROSetII6.4と8.0について



PROSet6.4と8.0で、転送速度やCPU負荷に変化が出るかを調べてみました。

エクスプロラーでのローカル⇔リモート間ファイル転送測定方法はこちら


ローカル-リモート間ファイル転送速度
測定環境
ローカルPCメインPC
リモートPCセカンドPC
接続形態HUB経由
プロトコルNETBEUI
ドライバPROSet 6.4 及び 8.0
※ダミーファイルをエクスプローラーにて転送し、5回の平均転送時間を元に転送速度を求めた。測定にはストップウォッチを使用した。
・CPU負荷
Remote → Local (Download) Local → Remote (Upload)
Pro/100 S
(PROSetII:6.4)
Download時CPU負荷

Upload時CPU負荷

Pro/100 S
(PROSetII:8.0)
Download時CPU負荷

Upload時CPU負荷


結果、有意な差は見られませんでした。

データ転送時間とチップ表面温度(℃)
チップ表面温度
測定環境
ケース内温度
(測定開始時)
30.4℃
ケース内温度
(測定終了時)
30.4℃
室温22.5℃
接続速度100Mbps / Full Duplex
転送プロトコルNETBEUI
※温度変化が30秒以上観察されなくなるまでダミーファイルを連続的に転送した。

総合評価

あちこちで高い評価を得ているこのLANカードですが、他のNICと比べれば比べるほど(他のNICレビューを参照)、 決して雑誌記事のようにスポンサーの製品をべた褒めしているのではなく、実際に性能が評価されているということが確認できました。

特に安定性は抜群で、VT6102やRTL8139等で見られるような、ファイル転送中にネットワークを認識しなくなる,転送が止まってしまう, ハングアップする等のトラブルは購入後一度も無く、現在も安心して使えています。
むしろ低価格NICのほうは、そのようなリスクを負う見返りとして価格が抑えられていると言っても過言ではないでしょう。
少なくともNICについては、個人レベルでも安定性に対してお金を払っても良いのではないでしょうか。
NICはもともと他のPCパーツよりも安いので、個人用途ではほぼ最上級品が\3000〜\4000で手に入ると考えれば、このPro/100 Sは決して高価ではないはずです。